この質問、英語学習の掲示板で毎回炎上します。「頭の中で訳すなんて論外」と切り捨てる派と、「訳せるうちは訳せばいい」と擁護する派で、真っ二つに割れるからです。
どちらも半分正しくて、半分間違っています。あなたが今どのレベルにいるかで、正解が入れ替わるタイプの質問だからです。
📌① なぜ「訳すな」と言われるのか
英語の音声は、日本語よりだいぶ速く進みます。ネイティブの会話はだいたい1分間に150〜180語。学校のCDで慣らされた120語ペースの1.3倍以上あります。
この速さで流れてくる英文を、頭の中でいちいち日本語にひっくり返していると、訳し終わる前に次の文が来る。追いつけずに固まって、そこで音声が終わる——これが「訳すと聞けない」の中身です。
だから上級者向けの指導では「訳すな、英語のまま処理しろ」と言います。これ自体は正しい助言です。ただし、これを初中級者が真に受けると、訳す以外に理解する手段がない段階で意味を放棄することになり、余計に何も残らなくなります。
📌② 初中級では、訳せているならむしろ健全
英検3〜準2級、TOEIC 500点前後までは、頭の中で日本語に置き換えられていること自体が語彙と文法がちゃんと働いている証拠です。訳す作業をやめるべきではありません。
この段階で本当に直すべきなのは、訳すことではなく返り読みです。「He said he would come if the weather was good.」を「もし天気が良ければ来ると彼は言った」と語順を入れ替えて訳している人は、耳で聞くと必ず溺れます。
対策は簡単で、スクリプトを英語の語順のまま日本語にする練習です。「彼は言った / 彼は来るだろうと / もし天気が良ければ」——語順ごとに区切って訳す。ぎこちない訳になりますが、これができるとリスニング速度が一気に上がります。
📌③ 中上級では、訳すのを「間引く」段階に入る
TOEIC 700点、英検2級を超えたあたりから、訳すクセが逆に足を引っ張り始めます。意味は取れているのに、日本語に置き換えるひと手間で処理が遅れるようになるからです。
この段階でやるのは、「一気に全部訳すのをやめる」ことです。全部訳さず、キーワードだけ日本語で意識に浮かべる。「あ、cancel って言ったな」「Tuesday か」だけ拾って、文全体は英語のまま流していく。
音読とシャドーイングを毎日15分やると、この切り替えが起きます。口が動いている間は訳せないので、脳が「訳さずに理解する回路」を強制的に育てるからです。
📌④ 自分がどっち側かの見分け方
テストは1つだけ。3〜4語の短いフレーズを、日本語に訳す前に反応できるかです。
「Can you help me?」と言われて、日本語を挟まずに「Sure」と返せるならもう英語で処理できています。「えっと、can you help me は…手伝って…あ、Yes」となるなら、まだ訳す段階に居ます。
訳す段階の人が上級者のアドバイス(訳すな)を先取りしても、聞き取りは伸びません。今のレベルの正しい練習だけをやってください。訳し切る力を先に付けたほうが、あとで訳を捨てるのも早いです。
最後にひとつ。ネイティブでも、母語話者以外の英語を聞くときは頭の中で調整が入っています。日本人が全員「英語のまま100%処理」できるようになる必要はまったくありません。
🔊そのまま使える例文(音声つき)
再生ボタンを押すと、ネイティブ発音で読み上げます。声に出して真似すると定着が段違いです。
🔥 まるっとまとめ
- 訳すクセが良いか悪いかはレベル依存。真ん中の正解はない。
- 初中級では訳してよい。直すべきは訳すことではなく返り読み。
- 中上級では全部訳すのを間引き、キーワードだけ日本語で意識する。
- 切り替えを起こす練習は音読・シャドーイング。口が動いていると訳せない。
- 3〜4語の短文に日本語を挟まず反応できるかで、自分の段階が分かる。