近所のスーパーで顔なじみに会って "Hey, how's it going?"(よう、調子どう?)と声をかけると、軽く肩をすくめてこう返ってきます。
直訳した日本人は首をかしげます。「文句を言えない…?誰かに口止めされてるの…?」
禁止でも我慢でもありません。これは "I can't complain."(文句を言おうにも、言うことが見つからない)の省略で、つまり「不満なし=まあまあ元気にやってるよ」という近況報告。"I'm fine, thank you." しか知らないと一生出てこない、大人の余裕が漂う返事です。今日はこれを、会話例と一緒に「使える状態」までもっていきます。
意味と使いどころ
"Can't complain" は、"How are you?" 系のあいさつに「特に問題なくやってるよ」と控えめに返すフレーズです。絶好調アピールでも不調自慢でもない、ほどよい中間を表現できます。
- "How's it going?" "How've you been?" など近況あいさつへの返事に
- "How's business?"(商売どう?)への謙遜まじりの「ぼちぼちです」に
- "Can't complain about the weather."(この天気に文句はないね)のように対象を付けても使える
会話で見てみよう
▼ 久しぶりに会った旧友と
▼ 商売の調子を聞かれた店主
似ている表現との違い
| 表現 | ニュアンス | 場面 |
|---|---|---|
| Can't complain. | まあまあやってるよ(不満なし) | 近況あいさつへの大人の返事 |
| Not bad. | 悪くないよ(軽い満足) | あいさつにも感想にも使える万能選手 |
| Pretty good. | けっこう元気だよ(素直に良い) | ポジティブに答えたいとき |
| Could be worse. | もっと悪い可能性もあったし(苦笑い) | 正直イマイチだけど笑い飛ばすとき |
温度の順に並べると Pretty good > Not bad ≧ Can't complain > Could be worse。面白いのは、英語ネイティブ(特にイギリス系)は好調でもあえて控えめな "Can't complain" を選ぶことが多い点です。「元気?」に全力で「最高!」と答え続けなくていいのは、日本人にとってむしろ楽かもしれません。
☕ ひとくちコラム イギリス人の「ぼやかない美学」
控えめに言って多くを伝える話法を understatement(控えめ表現)と呼び、特にイギリス英語の得意技です。"Can't complain" の兄弟分に、イギリスの年配の方が多用する "Mustn't grumble."(ぼやいちゃいかんね=まあ元気だよ)という渋い返事もあります。大雨を "a bit wet"(ちょっと湿ってるね)、大惨事を "not ideal"(理想的ではないね)と言うのも同じ美学。小さく言うほど、余裕が大きく見えるのです。
この感覚がつかめると、映画やドラマの会話の「行間」が読めるようになってきます。あいさつの返事のバリエーションをまとめて増やしたい人はネイティブが本当に使う英会話フレーズ100選でストックを仕込んでおきましょう。
今日のまとめ
今週、"I'm fine" と言いそうになったら1回置き換えてみてください。一気にこなれて聞こえます。