だらだらと前置きが続く商談の途中、時計をちらっと見たクライアントがこう切り出します。

Let's cut to the chase. How much is this going to cost?
単刀直入にいきましょう。で、費用はいくらですか?
前置きを飛ばして本題・核心に入るときの決まり文句。ビジネスで頻出。

直訳は「チェイス(追跡)へカットしよう」。日本人の頭には「追いかけっこ? 誰を追いかけるの?」と盛大なハテナが浮かびます。

実はこれ、映画の編集用語がそのまま日常会話に定着したフレーズ。意味は「退屈な部分を飛ばして、一番面白いところ=本題に行こう」です。なぜ「チェイス」が本題なのかは、100年前のハリウッドに答えがあります。語源ごと覚えれば一生忘れません。今日はその物語つきでお届けします。

意味と使いどころ

"cut to the chase" は、前置き・世間話・回りくどい説明を飛ばして、いきなり核心に入るという意味のイディオムです。"Let's cut to the chase." の形で「単刀直入にいきましょう」と切り出すのが定番です。

💡 cut は「編集でカットをつなぐ」の cut 映画編集で「シーンAからシーンBへ切り替える」ことを cut to 〜 と言います。つまり cut to the chase は「(退屈なシーンを飛ばして)チェイスシーンに切り替えろ」という編集指示。ハサミで何かを切るのではなく、場面をパッと切り替えるイメージで捉えると、意味がすっと入ってきます。

会話で見てみよう

▼ 上司との面談で

I'll cut to the chase. We'd like to offer you the manager position.
単刀直入に言います。あなたにマネージャー職をお願いしたい。
Wow. I was not expecting that.
わあ、それは予想してませんでした。

▼ 遠回しな友達にしびれを切らして

So, um, hypothetically, if someone borrowed your car...
あのさ、えっと、仮の話だけど、誰かが君の車を借りたとしたら…
Cut to the chase. What happened to my car?
回りくどいのはいいから。俺の車に何があった?
親しい間柄なら命令形も。ただし尖って聞こえるので使う相手は選ぶこと。

似ている表現との違い

表現ニュアンス場面
Let's cut to the chase.単刀直入にいこう(お互いに)商談・会議で前置きを畳む
Get to the point.要点を言って(やや強め)相手の話が回りくどいとき
Long story short,早い話がね自分の長い話を要約する
Bottom line:結論はこれ最終結論・一番大事な数字を示す

"cut to the chase" は let's でお互いを主語にできるぶん、"Get to the point."(あなたが要点を言え)よりも角が立ちにくいのが特徴です。話の途中を省略するのが long story short、最後の結論だけ抜き出すのが bottom line、と役割が少しずつ違います。

⚠️ 1つだけ注意 相手に向かって命令形で "Cut to the chase." と言うと、「前置きが長い、イライラする」というニュアンスが乗ります。ビジネスで角を立てたくないなら Let's をつけて「一緒に本題へ行こう」の形にするか、自分の話に "I'll cut to the chase." と使うのが安全です。
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☕ ひとくちコラム 無声映画が生んだ「本題」という名のチェイス

1920年代の無声映画、特に喜劇の定番構成は「恋愛やドタバタの筋 → クライマックスの派手なチェイス(追跡)シーン」でした。観客のお目当てはもちろんチェイス。だから撮影所では「回りくどい筋はいいから、さっさとチェイスシーンへ切り替えろ(cut to the chase)」が編集の合言葉になり、これが「前置き抜きで一番大事なところへ」という意味に広がった、と言われています。映画館の暗闇から生まれて100年、今では世界中の会議室で毎日使われているわけです。

「要するに」系のフレーズをもう1枚持っておくなら、話す側の要約宣言 Long story short.(早い話がね)がおすすめ。「聞く前置きを切る」のが cut to the chase、「話す前置きを切る」のが long story short。両方あれば、会話のムダをどちら側からでも削れます。

今日のまとめ

📌 3秒でおさらい 本題に入りたいときは "Let's cut to the chase."(単刀直入にいきましょう)。自分の前置きを切るなら "I'll cut to the chase."。語源は無声映画のチェイスシーン。
今週、前置きの長い会議に出たら心の中で1回つぶやいてみてください。実際に言えたら上級者です。
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