だらだらと前置きが続く商談の途中、時計をちらっと見たクライアントがこう切り出します。
直訳は「チェイス(追跡)へカットしよう」。日本人の頭には「追いかけっこ? 誰を追いかけるの?」と盛大なハテナが浮かびます。
実はこれ、映画の編集用語がそのまま日常会話に定着したフレーズ。意味は「退屈な部分を飛ばして、一番面白いところ=本題に行こう」です。なぜ「チェイス」が本題なのかは、100年前のハリウッドに答えがあります。語源ごと覚えれば一生忘れません。今日はその物語つきでお届けします。
意味と使いどころ
"cut to the chase" は、前置き・世間話・回りくどい説明を飛ばして、いきなり核心に入るという意味のイディオムです。"Let's cut to the chase." の形で「単刀直入にいきましょう」と切り出すのが定番です。
- 会議や商談で時間がないので本題に入りたいとき
- 回りくどい説明を受けて「要するに何?」と促したいとき
- "I'll cut to the chase."(単刀直入に言うね)と自分の話の前置きにも使える
会話で見てみよう
▼ 上司との面談で
▼ 遠回しな友達にしびれを切らして
似ている表現との違い
| 表現 | ニュアンス | 場面 |
|---|---|---|
| Let's cut to the chase. | 単刀直入にいこう(お互いに) | 商談・会議で前置きを畳む |
| Get to the point. | 要点を言って(やや強め) | 相手の話が回りくどいとき |
| Long story short, | 早い話がね | 自分の長い話を要約する |
| Bottom line: | 結論はこれ | 最終結論・一番大事な数字を示す |
"cut to the chase" は let's でお互いを主語にできるぶん、"Get to the point."(あなたが要点を言え)よりも角が立ちにくいのが特徴です。話の途中を省略するのが long story short、最後の結論だけ抜き出すのが bottom line、と役割が少しずつ違います。
☕ ひとくちコラム 無声映画が生んだ「本題」という名のチェイス
1920年代の無声映画、特に喜劇の定番構成は「恋愛やドタバタの筋 → クライマックスの派手なチェイス(追跡)シーン」でした。観客のお目当てはもちろんチェイス。だから撮影所では「回りくどい筋はいいから、さっさとチェイスシーンへ切り替えろ(cut to the chase)」が編集の合言葉になり、これが「前置き抜きで一番大事なところへ」という意味に広がった、と言われています。映画館の暗闇から生まれて100年、今では世界中の会議室で毎日使われているわけです。
「要するに」系のフレーズをもう1枚持っておくなら、話す側の要約宣言 Long story short.(早い話がね)がおすすめ。「聞く前置きを切る」のが cut to the chase、「話す前置きを切る」のが long story short。両方あれば、会話のムダをどちら側からでも削れます。
今日のまとめ
今週、前置きの長い会議に出たら心の中で1回つぶやいてみてください。実際に言えたら上級者です。