日本語学習の最終ボスとも言われるテーマ。日本人でも社会人1〜2年目までは新入社員研修でひたすら叩き込まれる分野なので、外国人が難しく感じるのは当然です。
ただ、コツを一言でまとめると「誰が動くか」の一点だけを見ればいい。単語の暗記量は多いのですが、選ぶルール自体はシンプルで、そこさえ間違えなければ大きな失礼にはなりません。
📌① 3つの敬語 — 役割が全部違う
尊敬語:相手(または話題の中の目上の人)の動作を高める。主語は相手。
謙譲語:自分の動作を低くして、間接的に相手を持ち上げる。主語は自分。
丁寧語:動作の主が誰でも関係なく、話し方を丁寧にする。「です・ます」がこれ。
尊敬語と謙譲語の違いは「上げるか下げるか」ではなく、誰の動作を扱っているか。ここが決定的です。
丁寧語はどんな相手にも使える中立の敬語。まずは丁寧語を安定させてから、次に尊敬・謙譲に進むのが挫折しにくい順番。
📌② 「行く・来る」を例に整理
尊敬語(相手が動く):「いらっしゃる」「おいでになる」「お越しになる」。→ 部長がいらっしゃる。
謙譲語(自分が動く):「参る」「伺う」「上がる」。→ 私が明日参ります/伺います。
丁寧語(誰でも):「行きます」「来ます」。→ 私も友達も行きます。
「部長が伺います」はNG(伺う=謙譲、主語が相手の部長になっている)。「私がいらっしゃいます」もNG(尊敬を自分に使っている)。
「主語が誰か」を先に決めれば、あとは対応する敬語を引っ張ってくるだけ。ここを機械的にやれば、体系がぐらつきません。
📌③ 動詞ごとの主要ペアを丸暗記
見る:ご覧になる(尊)/拝見する(謙)/見ます(丁)。
言う:おっしゃる(尊)/申す・申し上げる(謙)/言います(丁)。
する:なさる(尊)/いたす(謙)/します(丁)。
食べる:召し上がる(尊)/いただく(謙)/食べます(丁)。
いる:いらっしゃる(尊)/おる(謙)/います(丁)。
動詞は10個弱の重要ペアだけ覚えれば、日常業務のほとんどをカバーできます。全部覚えようとしない。
📌④ 間違えると失礼だが、日本人でも間違える
二重敬語:「おっしゃられる」(尊敬「おっしゃる」+尊敬「られる」)。正しくは「おっしゃる」でOK。日本人もよくやる典型ミス。
謙譲語の方向間違い:「(社外の人に)田中がおっしゃっていました」。社内の田中に尊敬を使ってしまう例。正しくは「田中が申しておりました」。ビジネス日本語で最重要ポイント。
「させていただく」の乱用は別テーマになるほど根深い問題。詳しくは「させていただく」問題を参照。
外国人学習者が完璧を目指す必要はありません。「です・ます」を安定して使えれば、大半の場面で失礼にはならない。まず丁寧語をマスター、次に尊敬・謙譲の順で十分です。
🔥 まるっとまとめ
- 敬語は3種類:尊敬(相手が動く)・謙譲(自分が動く)・丁寧(誰でもOK)。上げ下げでなく「誰の動作か」で選ぶ。
- 「行く」なら:相手→いらっしゃる、自分→参る・伺う、どちらでも→行きます。
- 重要ペアは「見る・言う・する・食べる・いる」の10個弱で十分。全部覚えない。
- 「おっしゃられる」は二重敬語で誤り。「田中がおっしゃっていました」は方向間違いで、正しくは「申しておりました」。
- 外国人学習者はまず丁寧語を安定させる。尊敬・謙譲はビジネス日本語に入ってから。日本人でも社会人研修で学び直す分野。