数学の宿題を思い出してみてください。「二次方程式の問題を10問」「連立方程式の問題を10問」というふうに、同じ種類の問題がまとまって並んでいたはずです。これはブロック練習と呼ばれる、世界中の教科書がほぼ採用している形式です。

ところが2019年、アメリカの中学1年生700人超を巻き込んだランダム化比較試験(RCT=被験者をくじ引きでグループ分けして比較する、信頼性の高い実験デザイン)は、まったく逆の結果を報告しました。問題の種類をバラバラに混ぜて解かせたグループは、1カ月後のテストでまとめて解いたグループより23ポイントも高い正解率を記録したのです。この手法はインターリービング(interleaving=交互配置)と呼ばれています。

「まとめて集中的にやったほうが身につく」という感覚は、多くの人にとって自然なものだと思います。その直感がなぜ裏切られるのか、実験の中身から見ていきましょう。

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なぜ"まとめて解く"教科書ばかりなのか

数学の教科書を思い浮かべれば分かるとおり、練習問題は「直前の授業内容」に対応した問題が並んでいます。二次方程式の授業のあとには二次方程式の問題が10問、20問と続く。この並べ方には理由があります。生徒はどの解き方を使えばいいか、問題を読む前から分かっているため、迷わずスラスラ解け、正答率も高くなるからです。

この「解ける感覚」は先生にも生徒にも心地よいものです。しかし研究者たちは、この心地よさこそが落とし穴だと指摘しています。同じ解き方を続けて使っているだけでは、「この問題にはどの解き方を使うべきか」を自力で判断する力は鍛えられません。本番の試験や実生活では、問題は都合よく単元ごとに並んでくれないからです。

この「判断する力」を鍛える練習として研究されてきたのが、異なる種類の問題をあえて混ぜて出すインターリービング(交互配置)でした。

実験:54クラス・700人超を巻き込んだランダム化比較試験

この分野で近年もっとも規模が大きく、注目された研究のひとつが、Doug Rohrer、Robert Dedrick、Marissa Hartwigらが2019年に『Journal of Educational Psychology』誌に発表した実験です。

アメリカの公立中学校で、7年生(日本の中学1年生に相当)の数学クラス54クラスを、教師・学級ごとまとめてくじ引きでどちらかの条件に割り当てました。

この宿題を4カ月間にわたって継続し、その後どちらのグループも同じ復習セッションを受けました。そして、生徒には知らされないまま1カ月後に抜き打ちテストを実施しています。教師には特別な研修はせず、ふだんどおりの教え方をしてもらったという点も、実際の教室に近い条件です。

💡 この実験デザインが信頼できる理由 個々の生徒ではなくクラス単位でランダムに条件を割り振る「クラスター無作為化」という手法が使われています。1つの教室内で2種類の宿題が混ざる心配がなく、しかも54クラスという規模で行われているため、たまたまの偏りが結果を左右しにくい設計になっています。

結果:正解率61%対38%、23ポイントの差

1カ月後の抜き打ちテストの結果は次のとおりでした。

宿題の形式1カ月後テストの正解率
ブロック課題(同じ種類をまとめて解く)38%
インターリーブ課題(種類を混ぜて解く)61%

論文では、この差の効果量(d値=グループ間の差の大きさを表す統計指標)はd = 0.83と報告されています。教育心理学の研究では、この大きさは「大きな効果」に分類されます。教師たちは特別な訓練なしにこの宿題形式を実施でき、実験後のアンケートでは、結果を知る前の段階からインターリーブ課題を支持する声が多かったとも報告されています。

この結果は単発の実験ではありません。同じRohrerらが2014年に『Psychonomic Bulletin & Review』誌で発表した実験では、7年生140人を対象に9週間の宿題形式を比較し、2週間後のテストで正解率72%対38%(d = 1.05)という、さらに大きな差を報告しています。この実験がとくに興味深いのは、混ぜた問題どうしが一見まったく違うテーマに見える組み合わせでも効果が確認された点です。「似ている問題を見分ける練習になっているだけ」という説明だけでは足りないことを示しています。

図1:宿題の解き方による、1カ月後テストの正解率の差
38% 61% ブロック課題 同じ種類をまとめて解く インターリーブ課題 種類を混ぜて解く 100% 75% 50% 25% 0%
54クラス・700人超を対象にした2019年のランダム化比較試験。宿題の解かせ方を変えただけで、1カ月後のテストの正解率に23ポイントの差が生まれた。
出典:Rohrer, Dedrick & Hartwig (2019) の1カ月後テスト正解率をもとに作図

さらに、この効果は「テストのときだけ」のものではありませんでした。Taylor & Rohrer(2010)が子どもを対象に行った実験では、練習セッション中の出来はむしろインターリーブ条件のほうが悪かったにもかかわらず、1日後のテストではスコアがほぼ2倍になったと報告されています。練習中の手応えと、本当に身についているかどうかは別物だということです。

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なぜ混ぜて解くほうが身につくのか

メカニズムの説明として有力視されているのが、「見分ける力」が鍛えられるからという考え方です。ブロック課題では「この10問はぜんぶ二次方程式」と分かっているので、生徒は問題文をよく読まなくても解き方を選べてしまいます。一方インターリーブ課題では、1問ごとに「これはどの単元の問題か」「どの解き方が合うか」を自分で判断しなければなりません。この判断そのものが練習になる、というわけです。

言葉を使わない分野の実験でも、同じ現象が確認されています。心理学者のNate KornellとRobert Bjorkが2008年に『Psychological Science』誌で発表した実験では、参加者にさまざまな画家の絵を見せて画風を覚えてもらいました。1人の画家の絵を続けて見せる(ブロック)条件と、複数の画家の絵を混ぜて見せる(インターリーブ)条件を比べたところ、新しい絵を見て「これは誰の作品か」を当てるテストでは、混ぜて見せたグループのほうが高い成績を収めています。ある画家の特徴は、別の画家の絵と並べて比べるほうが際立って見えてくる、という理屈です。

図2:ブロック練習とインターリーブ練習で、何が違うのか
❶ ブロック練習(同じ種類が連続) A A A 解き方を選ばず反射的に解ける ❷ インターリーブ練習(種類が混在) A B C 毎回「どの解き方か」を判断する この判断そのものが、見分ける力の練習になる ※ 研究知見をもとにしたイメージ図(実測値ではありません)
ブロック練習は「答えの選び方」を考える必要がない。インターリーブ練習は1問ごとに判断が必要になるぶん、その判断力自体が鍛えられると説明されている。
Rohrer(2012)らの研究で提案されている「識別(discrimination)」仮説をもとにしたイメージ図
🧩 ざっくり言うと ブロック練習は「解き方を実行する」練習、インターリーブ練習は「どの解き方を選ぶか判断する」練習。本番のテストや会話で本当に必要なのは、たいてい後者のほうです。

この話、こう使える

数学の実験ではありますが、「似た選択肢の中から適切なものを選ぶ」という構造は、英語学習にもそのまま当てはまります。具体的な取り入れ方を挙げます。

1. 文法ドリルは単元ごとに終わらせない
現在完了・過去完了・受動態を、あえて混ぜて解く
「現在完了の問題集を1冊終わらせてから次へ」ではなく、後半は複数単元をシャッフルした問題で復習する。「どの文法を使うべきか」を判断する練習そのものが、似た文法の取り違えを減らします。
2. 単語アプリはカテゴリー別より「シャッフル」モードで
動詞・形容詞・熟語を混ぜて復習する
同じ品詞・同じ単元の単語ばかり続けて復習すると、次に何が出るか予測できてしまい、思い出す負荷が下がります。多くの単語アプリにある「ランダム出題」を積極的に使いましょう。
3. 最初の一巡はブロック、2巡目からインターリーブ
まったく新しい内容はまとめて学び、復習段階で混ぜる
Rohrer(2012)のレビューは「少なくとも一部の練習はインターリーブすべきだ」という穏当な結論にとどめています。学び始めたばかりの文法や単語をいきなりシャッフルするのではなく、ひととおり理解したあとの復習フェーズから取り入れるのが現実的です。
4. 「解きにくい」を、やめる理由にしない
練習中の手応えの悪さは、むしろ効いているサインかもしれない
Taylor & Rohrer(2010)が示したとおり、インターリーブ練習は練習中の成績はむしろ下がるのが普通です。「今日は解けなかった」で判断して元のやり方に戻すと、長期的に効果の大きい練習法を手放すことになりかねません。

注意点:この研究の限界

ここまで読むと「とにかく全部シャッフルすればいい」と思いたくなりますが、それは行き過ぎです。研究の外側まで結論を伸ばさないために、正直に限界も書いておきます。

⚠️ やりがちな失敗:学び始めたばかりの内容までいきなり全部混ぜる 解き方をまだ身につけていない段階でシャッフルすると、単に混乱するだけで終わってしまうおそれがあります。Rohrer(2012)のレビューも「少なくとも一部はインターリーブすべき」という穏当な表現にとどめており、ブロック練習を全廃すべきだとは述べていません。まずは各パターンの解き方を一度学んでから、復習の段階で混ぜるのが安全です。

要するに、インターリービングは「解ける感覚」を犠牲にして「使い分ける力」を鍛える手法です。今日解けた問題の数ではなく、1カ月後に何が残っているかで評価する。そう割り切れる範囲から、少しずつ取り入れるのが現実的です。

よくある質問

英単語や英文法の学習にもインターリービングは使えますか?
数学ほど大規模に検証されているわけではありませんが、原理は応用できると考えられています。Rohrer(2012)のレビューは、似た概念同士を混同しやすい場面ほどインターリービングが効きやすいと指摘しています。現在完了形だけを20問続けて解くのではなく、過去形・現在完了形・過去完了形を混ぜて解けば、「どの文法を使うべきか」を毎回判断する練習になり、似た文法を取り違えにくくなると期待できます。ただし英語学習そのものを対象にした大規模なランダム化比較試験はまだ数学ほど多くありません。
効果が高いなら、なぜ多くの人や教材はインターリービングを使わないのですか?
「やりにくく、効果が低く感じる」からだと報告されています。Hartwigらが2022年に発表した研究では、大学生の多くがまとめて解くスケジュールのほうが優れていると誤って判断していました。2025年の調査でも、中学1年生の多くがインターリービングを不人気で効果が低いと評価しています。実際には、Rohrerらが数学教科書13,505問を調べた研究で、インターリーブされた問題はわずか9.7%にとどまっていました。効果が高いのに手応えが悪いため、教材にも取り入れられにくいというのがこの分野で繰り返し指摘されている点です。
インターリービングなら、どんな学習にも効果がありますか?
万能ではないと報告されています。Nohら(2016)の研究では、はっきりしたルールで説明できる分類の学習はまとめて練習したほうが有利になる場合があり、直感的にしか説明しにくい分類の学習はインターリービングが有利になるという逆転現象が確認されました。また練習している最中の成績はインターリービングのほうがむしろ下がることも分かっています。「今すぐ点を取りたい練習」より「1カ月後、1週間後まで残したい学習」に向いている手法だと考えるのが妥当です。

今日の3行まとめ

📌 これだけ持ち帰ってください 同じ種類の問題をまとめて解く(38%)より、種類をバラバラに混ぜて解く(61%)ほうが、1カ月後のテストの正解率は高かった。
練習中の手応えは悪くなりますが、鍛えられているのは「どれを使うべきか判断する力」です。新しい内容はまとめて学び、復習は混ぜて解く。

文法をまとめて総復習したい人は、やり直し英文法もあわせてどうぞ。インターリービングを意識した復習の組み方のヒントになります。

✍ 「思い出す・判断する」練習を、そのまま形にしたトレーニング

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参考文献