📖くわしく解説します
get cold feet は、結婚や引っ越し、転職といった大きな決断を目前にして、急に怖くなって踏み出せなくなることを表す慣用句です。I think he's getting cold feet about the wedding.(彼、結婚式のことで怖気づいているみたいだ)のように使われ、英語の結婚にまつわる話題では定番の表現になっています。
この言い回し自体は17世紀の英文学にすでに登場しますが、話はそこで単純には終わりません。劇作家ベン・ジョンソンの喜劇『ヴォルポーネ』(1605年頃)には cold feet という言葉が出てきますが、これは「金がない」という意味のイタリアの慣用句を踏まえた、文字どおりの用法でした。「怖くて決断できない」という今の意味での最初期の用例は、アメリカ英語で確認されています。語源辞典Etymonlineは1893年とする一方、俗語辞典として定評のあるRandom House Historical Dictionary of American Slangは、作家スティーヴン・クレインの小説『Maggie: A Girl of the Streets』の1896年の第二版に実例があると指摘し、1893年の初版には見当たらないとしています。辞書ごとに最初の用例の扱いがずれているのは、このためです。
由来についての説も一本化されていません。有力候補のひとつは、ドイツ語の kalte Füße bekommen(冷たい足を得る)という表現からの直訳(カルク)説です。ドイツの作家フリッツ・ロイターが1862年に発表した小説の中に、この言い回しが2回登場することが知られており、英訳では登場人物が "haven't I as good a right to cold feet as you?"(僕にだって、君と同じだけ怖気づく権利があるんじゃないか)と口にします。もう一つの説は、言語学者ケネス・マッケンジーが1912年の論文で指摘した、イタリア・ロンバルディア地方の方言「金を持っていない」という意味の言い回しが土台にあるという説です。どちらも決定的な証拠はなく、並存したままです。
一方、よく語られる「戦場で足が凍傷になった兵士が、それを理由に戦闘を避けた」という軍隊起源説は、裏付けが弱く説得力に欠けます。この表現自体がアメリカ英語で定着したのは19世紀末で、第二次世界大戦よりも何十年も前です。順序が逆なので、この説は後付けの可能性が高いと考えられています。はっきりしているのは、cold feet が「寒さ」ではなく「土壇場の弱気」を指す言葉として、19世紀のうちにアメリカで独自に根づいたという点だけです。結論を急がず「有力な説が複数ある」とだけ覚えておくのが、いちばん正確な向き合い方だといえます。
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❓まとめ
Q. 結婚式の直前に腰が引けてしまうことを、英語では get cold feet(足が冷たくなる)と言います。なぜ「怖気づく」ことが、足の冷たさで表されるようになったのでしょうか?
A. はっきりした由来は今も特定できていません。ドイツ語の慣用句、イタリア・ロンバルディア地方の言い回し、アメリカの賭け事スラングなど複数の説が並び立っていて、辞書同士でも最初の用例の扱いが一致しない、珍しく語源が割れたままの表現です。