📖くわしく解説します
スーパーのレジでよく見る "10 items or less"(10点以下)という表示。英語ネイティブの中には、これを見るたびに fewer が正しいのでは、と心の中で訂正してしまう人がいます。学校で習う文法規則では、数えられる名詞には fewer、数えられない名詞には lessを使うとされているからです。fewer books(数えられる本)、less water(数えられない水)、という具合です。
この規則、実は1770年、イギリスの文筆家ロバート・ベイカーが著書 Reflections on the English Language の中で述べた一文がルーツです。ベイカーは "No less than a hundred" という表現について、fewer の方がより上品でより正確だと思う、と書き残しました。ただしその書きぶりは "I should think"(私はこう思う)、"appears to me"(私にはそう見える)という控えめな個人の感想にすぎず、命令形のルールではありませんでした。
それにもかかわらず、後世の文法書がこの一文を絶対のルールとして取り上げ、教科書に定着させてしまいました。皮肉なことに、『オックスフォード英語辞典』には、9世紀の王アルフレッド大王が書き残した文章にすでに、数えられる名詞に less を使った例が見つかっています。ベイカーが「間違い」と決めつけた用法は、彼の指摘より1000年近くも前から普通に使われていた、由緒正しい英語だったのです。
現在でも多くのスタイルガイドは fewer と less の使い分けを教えていますが、言語学者の間では「単なる文体の好みであり、破ったところで誤りとは言えない」という見方が主流です。それでも "10 items or less" の表示を見て思わず fewer に直したくなる人が後を絶たないのは、たった1人の1770年の個人的な感想が、250年かけて「守るべき規則」に育ってしまった証拠と言えるでしょう。
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❓まとめ
Q. 「less ではなく fewer を使え」というルール、実はある文筆家1人の個人的な好みから広まった
A. 1770年に文筆家ロバート・ベイカーが「fewer の方が上品だと私は思う」と書いた控えめな一文が、後世の文法書で絶対のルールに格上げされたものです。