📖くわしく解説します
「陰謀を企む秘密の一味」を意味するcabalには、あまりによくできた語源説が広まっています。1667年から1673年にかけてイギリス国王チャールズ2世の外交顧問を務めた5人の大臣——Clifford、Arlington、Buckingham、Ashley、Lauderdale——の頭文字をつなぐと、ちょうどCABALになる。だからこの5人組にちなんで生まれた単語だ、というものです。しかしこれは事実ではありません。
cabal の本当の語源は、ユダヤ教の神秘主義的教義体系を指すカバラ(Kabbalah)です。ヘブライ語から中世ラテン語 cabbala、フランス語 cabale を経て英語に入り、1529年ごろにはすでに「秘教的な教え」を意味する語として使われていました。その後1640年代、チャールズ1世やクロムウェルの時代の政争を背景に「少人数による陰謀、またはその一味」という政治的な意味が加わり、1647年ごろにはこの用法がすでに定着しています。チャールズ2世が例の5人を顧問に集めたのは1667年——cabal が「陰謀の一味」を意味する単語として、その20年も前から普通に使われていたことになります。
では、なぜこの語源説がここまで広まったのでしょうか。実はクリフォードら5人の頭文字が偶然 CABAL と並ぶことに、当の同時代人たちもすぐ気づいていました。1673年に出回った風刺パンフレットがこの偶然をからかいの種にし、この5人の秘密内閣は「Cabal Ministry(カバル内閣)」という愛称で呼ばれるようになったのです。つまり順序は逆で、既に存在した cabal という単語にちなんで5人組があだ名を得たのであり、5人組の頭文字から単語が生まれたのではありません。
posh や golf、cop のように「都合よく頭文字をつなげた作り話」の語源は数多く知られていますが、cabal が厄介なのは頭文字が実際に一致しているという点です。この「本当に一致する偶然」が話を余計にもっともらしく見せ、350年以上たった今もまことしやかに語り継がれています。単語の意味とタイミングの両方を確認して初めて、偶然の一致と語源そのものの混同に気づけるという、良い教訓を示す一例です。
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❓まとめ
Q. cabal(陰謀を企む一味)の語源は、チャールズ2世の5人の大臣の頭文字を並べたもの?
A. 頭文字が一致したのは偶然です。cabal という単語自体は、5人が大臣に就任するより20年ほど前から「陰謀の一味」の意味で使われていました。本当の語源はヘブライ語のカバラ(Kabbalah)です。