📖くわしく解説します
「カナダという国名は、実はスペイン語で『ここには何もない』という意味だった」——旅行雑誌やSNSで繰り返し語られてきた話です。金銀を求めてやってきたスペインかポルトガルの探検家が、めぼしい資源を見つけられず、がっかりして地図の余白に acá nada(ここには何もない)、あるいは cabo de nada(何もない岬)と書き込み、それがそのまま国名になった、という筋書きです。
実際の定説はまったく別のところにあります。1535年、フランス人探検家ジャック・カルティエが現在のケベック州あたりを訪れた際、案内役だった2人の若いセントローレンス・イロコイ族に村への道を尋ねたところ、彼らは kanata(村・集落)という語で自分たちの集落ストダコナを指しました。カルティエはこの語を、目の前の一つの村の名ではなく、周辺一帯の広い地域を指す言葉だと誤解して記録に残し、これが後にヨーロッパの地図で北米北東部全体を指す国名として定着していったとされています。
では acá nada 説はどこから来たのでしょうか。歴史家たちが史料を洗っても、スペイン語やポルトガル語の探検家がイロコイの人々とこの語をやり取りした記録は一つも見つかっていません。似た音の単語がたまたま「国名の由来」として結びつけられ、「資源にがっかりした探検家」という分かりやすい物語の型に乗せられて広まった、いかにも作り話らしい語源だという見方が有力です。
こうした「探検家が落胆して書いた地名」というパターンは、実はカナダに限った話ではありません。似たような「がっかり系」の地名語源譚は世界のあちこちで語られますが、裏付けが取れる例はごくわずかです。国名の語源を聞かれたら安易に頭字語や俗説に飛びつかず、まずは「先住民の言葉に由来する説はないか」を疑ってみる価値がありそうです。
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❓まとめ
Q. Canada(カナダ)の国名は、スペイン語で「ここには何もない(acá nada)」と書いたのが由来 — これもガセです
A. 大航海時代の探検家が金銀を見つけられず、地図に「acá nada(ここには何もない)」と書き込んだのが国名の由来だ、という話が広く語られていますが、この交流を裏づける史料は一切見つかっていません。定説は、先住民セントローレンス・イロコイ語の kanata(村・集落)に由来するというものです。