答えpilcrow という名前は、ギリシャ語 paragraphos に由来する語が古フランス語・中英語を経て訛った末の形だというのが辞書の説明です。crow との結びつきは、記号の初期の塗りつぶされた形がカラスに似ていたからという話が広く伝わっていますが、辞書自身も「確証はない」としており、有力ではあるものの俗説に近い説明です。

📖くわしく解説します

Word や Google ドキュメントで「編集記号の表示」を押すと、文の末尾に小さな という記号が浮かび上がります。多くの人はこれを「段落マーク」程度にしか認識していませんが、英語にはこの記号だけのための独立した名前があります。その名は pilcrow(ピルクロウ)。見慣れた記号なのに、なぜ crow(カラス)のような響きの単語が紐づいているのか、気になったことはないでしょうか。

¶の起源は古代ギリシャにさかのぼります。書き手は paragraphos と呼ばれる短い横線を文の左端に書き込み、話者の変化や話題の転換を読者に伝えていました。中世の写字生の間でこの印はしだいに形を変え、上下が逆になったL字のような記号、さらにラテン語で「小さな頭」を意味する capitulum を表すC字形の記号へと移っていきます。このC字形に装飾のストロークが重なって太らせていった結果、現在の¶に近い形へ落ち着いたとされています。

名前の方も同じくらい長い旅をしています。ギリシャ語 paragraphos が古フランス語で paragrafe・pelagraphe のような形になり、中英語では pilcraft という語形に訛りました。これが1570年代ごろの英語で pilcrow として定着したというのが、Etymonline など辞書の説明です。crow との結びつきについては、記号の初期の塗りつぶされた形がカラスに似ていたから、という話が広く伝わっていますが、辞書自身も「確証はない、俗説に近い」と注記しており、あくまで有力な一つの見方にとどまります。

似た生まれを持つ記号に、法律文書で条文番号の前に置かれる §(セクションサイン)があります。最も語られる説は、ラテン語 signum sectionis(区切りのしるし)の頭文字 S を2つ重ねた合字だというものですが、Wikipediaにもあるとおり、この説に懐疑的な学者もいて、paragraphos から派生したという別の説も唱えられており決着していません。奇妙な一致として、¶は今ではWordの非表示文字機能の中にひっそり残るだけですが、§はいまも法律や契約書の条文番号として現役で使われ続けています。

スポンサーリンク

🔊この話に出てきた英語を使ってみる

音声ボタンを押すと、ネイティブ発音で読み上げます。

Click the paragraph mark button to see every pilcrow and space hidden in your document.
段落記号ボタンを押すと、文書の中に隠れているすべてのピルクロウ(¶)とスペースが表示されます。

🏷 pilcrow paragraphos section sign § 記号数字 kigou Etymonline

❓まとめ

Q. Wordや Google ドキュメントで「編集記号の表示」を押すと浮かび上がる ¶ という記号、実は英語にはこれだけのための名前があります。その名は pilcrow(ピルクロウ)——なぜ crow(カラス)のような響きが紛れ込んでいるのでしょうか?

A. pilcrow という名前は、ギリシャ語 paragraphos に由来する語が古フランス語・中英語を経て訛った末の形だというのが辞書の説明です。crow との結びつきは、記号の初期の塗りつぶされた形がカラスに似ていたからという話が広く伝わっていますが、辞書自身も「確証はない」としており、有力ではあるものの俗説に近い説明です。

🔢数字・記号・単位のナゾ の他のネタ

💡 英語の雑学・豆知識をすべて見る