📖くわしく解説します
pneumonia(肺炎)、psychology(心理学)、pterodactyl(翼竜)。どれも語頭に p の文字がありながら、英語では聞こえてきません。つづりだけを見れば「昔の発音が消えた」ように思えますが、実はこの p、英語の中で発音されたことが一度もないというのが実情です。
種明かしはギリシャ語にあります。pneuma(息・風)、psyche(心・魂)といった語は、もともとギリシャ語では pn・ps という子音の組み合わせをそのまま発音できました。ところがこれらの語が主にラテン語やフランス語を経由し、ルネサンス期の1400〜1700年ごろにまとまって英語へ取り込まれた際、英語の話し手はそもそも語頭に pn や ps を発音する習慣を持っていませんでした。そのため発音は自然と p を省いた ne(u)-、s- の形に落ち着いた一方、つづりだけはギリシャ語の姿を保つよう、当時の学者たちがあえて残したのです。ギリシャ語由来だと一目で分かることが、教養の証とされた時代の名残です。
この仕組みは、同じ「語頭の子音が聞こえない」仲間でも knight や knee の k(古英語・中英語では実際に kuh-nait、kuh-nee のように発音されていたものが、1600年前後の音変化で自然に消えた)とは成り立ちがまったく逆です。knight の k は「発音されていたのに脱落した」のに対し、pneumonia の p は「借用された時点から一度も発音されていない」。同じ「書いてあるのに聞こえない文字」でも、たどってきた歴史はこれほど違います。
同じ pn・ps・pt のパターンは、psalm(賛美歌)、pseudonym(ペンネーム)、ptarmigan(ライチョウ)、mnemonic(記憶術の)などにも見られ、いずれも語頭では最初の子音字が発音されません。ただしこの規則が働くのは語頭にあるときだけで、helicopter や synopsis のように語の途中に同じ組み合わせが来ると、p も k もふつうに発音されます。「なぜこの綴りなのに読まないのか」という違和感の裏には、発音の消滅ではなく、そもそも英語の口には収まらなかった外来の音という理由が隠れているわけです。
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❓まとめ
Q. pneumonia(肺炎)や psychology(心理学)の語頭の p、実はこれまで一度も発音されたことがありません
A. knight の k のように「昔は発音されていたが、後で脱落した」のではなく、pn・ps・pt という語頭の組み合わせは英語の発音の仕組みにそもそも合わなかったため、ギリシャ語から借用された最初から、英語ではずっと発音されていません。