答え「傷を蝋で埋めた彫像」の話は完全な作り話。sincerus はもともと「純粋な」という一語です。
📖くわしく解説します
有名な説はこうです。「古代ローマの彫刻家は、失敗した部分を蝋で埋めてごまかした。だから蝋のない(sine cera)彫像が『本物』を意味し、sincere になった」。スピーチのネタとして完璧なのですが、語源としては成立しません。
ラテン語の sincerus は分解できない一語で、意味は最初から「純粋な、混ざり物のない」。ワインや蜂蜜が薄められていない状態を指すのに使われました。sine(〜なしに)+ cera(蝋)という分解は、後世の人が音の似ている単語を当てはめた民間語源です。
この手の話には共通の見分け方があります。「その説明があまりにも教訓として出来すぎているとき」は、まず疑ってください。本物の語源は、たいていもっと地味です。
この彫像の話が特に厄介なのは、ビジネス書や自己啓発の講演で今も語られ続けていることです。教訓としてよくできているぶん、訂正が追いつきません。
ついでに sincere の使い方も押さえておきましょう。Sincerely, は英文メールの結びとして最も標準的な形で、相手の名前を知っているときに使います。名前が分からない場合の伝統的な結びは Yours faithfully,(イギリス式)。ただし現代のビジネスメールでは Best regards, が最も無難で、迷ったらこれで問題ありません。
スポンサーリンク
🔊この話に出てきた英語を使ってみる
音声ボタンを押すと、ネイティブ発音で読み上げます。
Please accept my sincere apologies.
心からお詫び申し上げます。
❓まとめ
Q. sincere は「蝋(ろう)なし = ごまかしなし」が語源 — というのはガセ
A. 「傷を蝋で埋めた彫像」の話は完全な作り話。sincerus はもともと「純粋な」という一語です。
🚫実はガセだった有名な語源 の他のネタ
英語の quiz という単語、1791年にダブリンの劇場経営者が「誰も知らない言葉を48時間でダブリン中に広められるか」と賭けをして生まれた——という有名な逸話がありますが、本当でしょうか?
スポーツブランドの adidas(アディダス)は "All Day I Dream About Sports"(一日中スポーツを夢見る)の頭文字だ、という話を聞いたことはありませんか? 本当でしょうか?
kangaroo(カンガルー)という単語、実は現地の言葉で「わかりません」という意味だった——という有名なトリビア、本当でしょうか?
"That's the real McCoy."(正真正銘の本物だ)という決まり文句、伝説のボクサー "Kid" McCoy が自分を疑う相手を一発でノックアウトして証明した逸話が語源だとよく語られますが、これは本当でしょうか?