📖くわしく解説します
遭難信号の SOS を見て、"Save Our Souls"(我らの魂を救いたまえ)や "Save Our Ship"(我らの船を救いたまえ)の略だと思っている人は多いはずです。ところがこれは順序が逆で、正しくはSOSという信号が先にあり、その意味を説明する言葉は後から考え出されたというのが実情です。
海上無線が普及し始めた1900年代初頭、遭難を知らせる符号は国によってばらばらでした。イギリスの無線技師たちは電信で使われていた呼び出し符号 CQ(「誰か聞こえますか」の意)に、危険を示す D を足したCQDを1904年ごろから使っていました。ドイツでは1905年の国内規則で別の符号が定められており、これが1906年にベルリンで開かれた国際無線電信会議で世界共通の遭難信号として採用されます(発効は1908年)。選ばれたのは、モールス信号にしたときに短点3つ・長点3つ・短点3つと切れ目なく続けて打てる、単純で聞き間違えにくい並びでした。それが S・O・S という3文字だったというだけで、当初から「どの単語の略か」という発想自体がなかったとされています。
この切り替えが劇的な形で表れたのが、1912年のタイタニック号沈没事故です。通信士ジャック・フィリップスは、当時イギリスの無線技師の間でまだ主流だったCQDで最初の遭難信号を送りました。ところが若手通信士ハロルド・ブライドが「新しい符号を使う最後のチャンスかもしれない」と半ば冗談交じりに提案し、SOSも合わせて発信することになります。結果として同船は、旧来のCQDと新しいSOSの両方を打電した、歴史上でも珍しい船になりました。
SOSが正式な信号として定着したあとになって、"Save Our Souls" や "Save Our Ship" といった語呂合わせが覚えやすさのための後付けとして広まりました。posh(golf、news、tip、copなども同様ですが)のような「もっともらしい頭字語説」がほぼ作り話であるのと似た構図で、SOSの場合は逆に信号が先、意味づけは後という珍しいパターンの語源俗説だといえます。
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❓まとめ
Q. SOS は "Save Our Souls"(我らの魂を救いたまえ)の略 — というのは本当?
A. 違います。SOSはもともとどの単語の頭文字でもありません。1906年の国際会議で、モールス信号として打ちやすく聞き取りやすいという理由だけで「・・・ー ー ー ・・・」という並びが選ばれ、"Save Our Souls" のような語呂合わせは後からつけられたものです。