答え17世紀にオランダ語 jacht(狩猟船の意)を綴りごとそのまま英語に取り込んだためです。原語にあった喉の奥でこすれる ch の子音は英語の音の仕組みにそもそも存在せず、発音だけが「ヨット」に単純化される一方、綴りはオランダ語の形のまま取り残されました。

📖くわしく解説します

英語のyacht(ヨット)は、綴りだけ見ると y-a-c-h-t の5文字です。ところが実際の発音はyot(「ヤト」に近い「ヨット」)で、真ん中のchはまるごと発音されません。knight や sword のように一部の文字が消える単語は英語に珍しくありませんが、この単語は綴りの半分近くが読まれないという、かなり極端な部類に入ります。

種明かしは単純です。yacht は17世紀に、オランダ語のjacht(もとは jaghtschip「狩猟船」の略で、「狩る」を意味する jagen に由来。ドイツ語の Jäger〈狩人〉と同じ語根)を、ほぼそのままの綴りで英語に取り込んだ単語だからです。16世紀のオランダは、海賊や密輸船を追いかけるための軽くて速い船を数多く建造しており、この種の船が jacht と呼ばれていました。英語圏にこの言葉と船そのものが広まる決定打になったのが1660年。王政復古でオランダから帰国したイングランド王チャールズ2世に、オランダ東インド会社から1隻の jacht(のちのMary号)が贈られ、これをきっかけに宮廷でヨットレースが流行しました。

問題は発音のほうです。オランダ語 jacht のchは、喉の奥をこすって出す、ドイツ語の ach やスコットランド英語の lochに近い子音で、英語の音の仕組みにはそもそも存在しません。英語話者はこの音を再現できず、単語が定着する過程で子音ごと脱落し、発音は「ヨット」に丸まりました。ところが綴りのほうは、coffee(オランダ語 koffie)のように英語風に書き直されることなく、オランダ語の acht をほぼそのまま持ち込んでしまったため、発音と綴りの間に大きな溝が残ったのです。

17世紀のオランダは造船と海運で世界をリードしていたため、英語には他にもskipper(船長)・cruise(巡航する)・freight(貨物)・deck(甲板)・dock(埠頭)など、オランダ語由来の海事用語が数多く残っています。yacht はその中でも綴りが原語のまま化石化した珍しい一例で、発音と綴りのギャップの大きさゆえに、英語学習者が最初につまずく単語のひとつにもなっています。

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My uncle just bought a small yacht for weekend sailing.
叔父は週末に乗るための小さなヨットを買ったばかりだ。

🏷 yacht jacht オランダ語 スペルと発音 語源 Charles II silent letters

❓まとめ

Q. yacht(ヨット)は、なぜ y-a-c-h-t と書いて cht の部分をまるごと発音しないのか?

A. 17世紀にオランダ語 jacht(狩猟船の意)を綴りごとそのまま英語に取り込んだためです。原語にあった喉の奥でこすれる ch の子音は英語の音の仕組みにそもそも存在せず、発音だけが「ヨット」に単純化される一方、綴りはオランダ語の形のまま取り残されました。

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