📖くわしく解説します
I was happy. He was late. 主語が単数なら be動詞の過去形は当然 was になります。ところが二人称の you だけは、たとえ目の前の一人だけに話しかけていても必ず you were と、were を使います。you だけがこの活用から外れているのは単なる偶然ではなく、はっきりした歴史的な理由があります。
中英語期の英語には、二人称に thou(親しい相手・単数) と you / ye(敬称・複数)という2つの代名詞がありました。17世紀までに thou は日常会話からほとんど姿を消し、you が単数・複数の両方をひとりでこなす代名詞になります。ところが動詞の活用のほうはyou の「複数」としての出自をそのまま引き継いでしまい、たった一人に話しかけているときでも were という複数形が居座り続けることになりました。
この「活用のねじれ」に対して、ふつうの話し言葉は意外と理屈に忠実に反応しました。目の前の一人に話すときは I was / he was と同じ発想でyou wasと言う人が、17〜18世紀のイギリスには教養層を含めて珍しくなかったのです。ロバート・ロウスの文法書を研究する歴史言語学者イングリッド・ティーケン=ブーン・ヴァン・オスターデによれば、you was は当時の書き言葉にも広く記録されており、単なる「教育のない人の言い間違い」ではなく、ごく自然に使われていた形だったとされています。
ところが1762年、聖職者で文法学者のロバート・ロウスが出版した文法書『A Short Introduction to English Grammar』がこの流れを断ち切ります。ロウスはyou は文法上あくまで複数であり、相手が一人でも you were のほうが正しいと断定し、you was を明確な誤りとして切り捨てました。この本は学校教育を通じて絶大な影響力を持ち、以後 you was は標準英語からほぼ排除されます。皮肉なことに、ロウス自身の私信には"I don't wonder that you was fatigued"(あなたが疲れていたのも不思議はない)という一文が残っており、ルールを作った本人が、くだけた場面では自分のルールを守っていなかったことがわかっています。
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❓まとめ
Q. "I was" "He was" なのに、二人称だけなぜ必ず "You were"? 一人に話しかけていても were を使うのは、実は英語そのものにとって不自然な決まりでした
A. you はもともと複数専用の代名詞だったため、動詞は常に複数形の were と結びついていました。you が一人の相手にも使われるようになると、I was / he was と同じ発想で "you was" と言う人が18世紀のイギリスで珍しくありませんでしたが、1762年に文法学者ロバート・ロウスがこれを誤りと断定し、"you were" だけが正解とされました。ところがロウス自身、私信では "you was" を使っていたことが記録に残っています。