📖くわしく解説します
同じ気温を表すのに、アメリカでは華氏(°F)、それ以外の大半の国では摂氏(℃)が使われています。どちらも18世紀前半、10年ほどの差で生まれた温度目盛りですが、基準の決め方も生まれた順番も別物です。まず先にできたのは華氏でした。
華氏を考案したのは、ドイツ生まれの物理学者ダニエル・ガブリエル・ファーレンハイト。1724年、彼は当時作れる最も低く再現性のある温度として、氷・水・塩化アンモニウムを混ぜた寒剤の温度を0度に定めました。上限には人の体温を採用し、当初は2・3・4・6・8・12で割り切れる96という扱いやすい数字に設定した、というのが定説です。この基準のもとで水は32度で凍り、212度で沸騰します(その差は180——これも約数の多い数字です)。のちに測定精度が上がり、実際の体温は96度ではなく98.6度だったと分かりましたが、目盛りの骨組みは変わらないまま今に至ります。
摂氏を考案したのはスウェーデンの天文学者アンデルス・セルシウスで、1742年のことです。ところが彼が最初に発表した目盛りは、今とは上下が逆でした。水の沸点を0度、氷点を100度とする方式だったのです。これを現在おなじみの「氷点0度・沸点100度」に反転させたのが誰かについては、諸説あります。フランス人天文学者ジャン=ピエール・クリスタンが1743年に独自に反転させたという説と、スウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネが1744年ごろに反転させたという説の両方が伝えられており、どちらが先だったかは今も決着していません。
結果として、体感に近い数字合わせから生まれた華氏と、水の性質を軸にあとから整理された摂氏という、成り立ちの異なる2つの目盛りが並立することになりました。科学の世界や気象データの多くは扱いやすい摂氏に統一されていますが、アメリカでは日常の天気予報から料理のオーブン温度まで、今も華氏が生活に根づいています。同じ「暑い」「寒い」を語るのに、まったく違う物差しが使われている——旅行や英語ニュースで気温を目にしたときは、この生い立ちの違いを思い出してみてください。
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❓まとめ
Q. 気温の摂氏(℃)と華氏(°F)、なぜ世界に2つの目盛りが残っているのか?
A. 先に生まれた華氏は「体温に近い数字」を基準にした実用スケール、後発の摂氏はもとは沸点0度・氷点100度という逆向きだったものを反転させてできたスケールで、そもそもの発想がまったく違います。