📖くわしく解説します
I・V・X・L・C・D・M を組み合わせるローマ数字には、算用数字の0にあたる記号が存在しません。これは単なる書き忘れではなく、ローマ数字が位取り記数法(桁の位置で10進法の値が決まる仕組み)ではないことが理由です。ものを数えて記録するための道具であって、「そこに何も無い」という状態そのものを書き表す出番が、想定されていませんでした。
それでも「ゼロに相当する量」を扱わざるを得ない場面はありました。復活祭の日付を計算していた6世紀の修道士ディオニュシウス・エクシグウスは、暦の計算上どうしても値がゼロになる年が出てきたため、数字の代わりにラテン語 nulla(何もない)という単語をそのまま書き込みました。これが記録に残る中では最も早い「ゼロの扱い」の例のひとつとされています。さらに8世紀ごろ、修道士ベーダらが同じ計算表の中で nullae の頭文字「N」を0の代わりに使った例も見つかっていますが、これはローマ数字の体系に0の記号が正式に加わったわけではなく、あくまで表の中だけの略記にとどまります。
この「0の不在」は、実は今のカレンダーにも影響を残しています。西暦(Anno Domini)を定めたのも、まさにこのディオニュシウス・エクシグウスでした。彼はローマ数字の発想のまま暦を組んだため、紀元前1年の次はいきなり西暦1年になり、「西暦0年」は存在しません。この抜けが、20世紀末に「2000年と2001年、どちらが新千年紀の始まりか」という論争を引き起こした遠因のひとつだとも言われています。
0を含む位取り記数法(いわゆるアラビア数字)は、もともとインドで生まれ、アラビア世界を経由して中世ヨーロッパに伝わったものです。0が無いローマ数字では掛け算や割り算の筆算がしづらく、実務ではしだいにアラビア数字へ置き換えられていきました。今もローマ数字が生き残っているのは、時計の文字盤や映画のクレジット年号のように、足し算・引き算どころか計算そのものをしない場面にほぼ限られています。
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❓まとめ
Q. ローマ数字には「0」がない。では古代ローマ人は「ゼロ」をどう表していたのか?
A. ローマ数字はそもそも「存在する量」を書き記すための記数法で0という記号を必要としておらず、どうしても「無い」ことを書く必要が出てきたときは、数字ではなくラテン語 nulla(何もない)という単語で済ませていました。