答え古代ローマの「解毒剤は塩ひとつまみと一緒に飲め」というレシピが、そのまま比喩になったから。
📖くわしく解説します
紀元77年、大プリニウスが『博物誌』の中で、ある解毒剤の処方を紹介しています。その最後に添えられていたのが addito salis grano(塩を一粒加えて)という一文でした。
なぜ塩なのか。ひとつはまずい薬を飲み下しやすくするため。もうひとつは、塩そのものに浄化・防腐の力があると信じられていたためです。いずれにせよ、「そのまま丸呑みせず、何かを足して飲み込む」という手続きがここにあります。
この「そのまま鵜呑みにしない」という部分だけが後世に残り、17世紀の英語で cum grano salis(with a grain of salt)として比喩に転じました。つまり「そのままでは飲み込めない話に、疑いという調味料を一振りしてから受け取る」ということです。語源を知ると、この表現が急に立体的になります。
実用上のポイントは強さの加減。これは「全部ウソだ」ではなく「話半分に聞いておく」という穏やかな留保です。相手を強く否定せずに疑いを表明できるので、ニュース、噂話、ネットの情報、統計の紹介などで非常に使い勝手がいい。イギリスでは a pinch of salt と言うほうが一般的です。
スポンサーリンク
🔊この話に出てきた英語を使ってみる
音声ボタンを押すと、ネイティブ発音で読み上げます。
Take online reviews with a grain of salt.
ネットのレビューは話半分に読んだほうがいい。
❓まとめ
Q. take it with a grain of salt(話半分に聞く)に、なぜ塩が出てくる?
A. 古代ローマの「解毒剤は塩ひとつまみと一緒に飲め」というレシピが、そのまま比喩になったから。
🍺慣用句のウラ側 の他のネタ
結婚式の直前に腰が引けてしまうことを、英語では get cold feet(足が冷たくなる)と言います。なぜ「怖気づく」ことが、足の冷たさで表されるようになったのでしょうか?
骨折り損の「無駄な追いかけっこ」を意味する wild goose chase(ワイルド・グース・チェイス)。なぜ、わざわざ「野生の雁」が出てくるのでしょうか?
"Are you pulling my leg?"(からかってるの?)——「脚を引っ張る」がなぜ「からかう・だます」になるのか、ネット上では処刑場の物騒な逸話がよく語られますが、本当でしょうか?
"Cut to the chase."(本題に入ろう)という言い回し、なぜ「追いかける」を意味する chase が出てくるのか? 実はサイレント映画時代の編集用語がそのまま日常語になったのだと知っていましたか?