答えyou はもともと複数形かつ敬称。親しい相手に使う thou が消えたので、全員が丁寧形になった。
📖くわしく解説します
中英語には二人称が2種類ありました。thou(親しい相手・目下・単数) と ye / you(複数・目上への敬称)。フランス語の tu / vous、ドイツ語の du / Sie と同じ構造です。
ところが英語では、丁寧なほうを使っておけば安全という判断が広まり、you の使用範囲がどんどん拡大。17世紀までに thou は日常会話からほぼ姿を消しました(聖書や詩、クエーカー教徒の間には残存)。
結果として現代英語は、親にも恋人にも赤ん坊にも犬にも、かつての敬称で話しかけていることになります。「英語には敬語がない」とよく言われますが、正確には「敬語しか残っていない」のです。
thou が消えたことには、副作用もありました。親しさを表す手段を失った英語は、代わりにあだ名・省略形・くだけた語彙で距離を調整するようになります。Robert を Bob と呼ぶ、Hello ではなく Hey と言う——代名詞でできなくなったことを、別の場所でやっているわけです。
thou は完全に消えたわけではありません。聖書の祈りの言葉、詩、そして一部の方言には今も残っています。皮肉なのは、現代の英語話者の多くがthou を「格式高い古語」だと思っていること。実際は真逆で、親しい相手に使うくだけた形でした。
スポンサーリンク
❓まとめ
Q. 英語話者は全員に敬語で話している
A. you はもともと複数形かつ敬称。親しい相手に使う thou が消えたので、全員が丁寧形になった。
🧩文法の裏ルール の他のネタ
コンマを一つ打つかどうかで、ある乳業会社は配送ドライバーたちに500万ドルを払うことになりました。英語の文章作法でいまも論争が続く「オックスフォードコンマ」、一体何がそんな大金を左右したのでしょうか?
"who" と "whom"、使い分けなんてもう要らないのでは? 実は whom は、英語がほとんど失った「格変化」(主語か目的語かで単語の形が変わる仕組み)の最後の生き残りのひとつで、しかも今まさに消えかけている最中だと、言語学の調査が報告しています。
"She isn't late, is she?" のように be動詞の否定疑問文はどれも規則的にできるのに、主語が "I" のときだけ "Amn't I late?" ではなく "Aren't I late?" と言う。なぜ "I" だけ仲間はずれになったのでしょうか?
Tom's bag のように名詞の所有格には ' が付くのに、its にはなぜ付かないのか? 実は its のほうが所有格として「正統派」だと知っていましたか?